ー本記事は旧ブログ2018年7月4日の内容をもとに、2025年版に更新していますー
「酵素ジュースって本当に体に良いの?」
「酵素って増えるの?意味あるの?」
そんな疑問を感じたことはありませんか?
ちょっと急すぎますが、こういうことって急に思ってしまってモヤモヤすると思うんです。
スー(@bacteria_suzu)です。
本日もお越しいただきありがとうございます。
私もキウイやブドウ、イチゴやスイカなどで仕込んでいた時期があります。
果物と砂糖を瓶に詰めて毎日混ぜていると、だんだんシュワシュワといい香りがしてきます。
まるで生き物を育てているようで、手づくりの楽しさがありますよね。
でも実は——この過程で増えているのは“酵素”ではなく“微生物”。
ここが酵素ジュースの最大の誤解ポイントです。名前よ…。
酵素は生き物ではないので自分で増えることはありません。
つまり「酵素ジュース=酵素が増えるから健康に良い」という説明は科学的には正しくなくて、実際に楽しめるポイントは、果物の表面に元々ついている酵母や乳酸菌といった微生物たちによる“発酵の変化”なんです。
この記事では、
- 酵素ジュースがどんな仕組みでできているのか
- 酵素とは何なのか
- 微生物は何をしているのか
を、中学生でも理解できるくらいに分かりやすく説明します。
そして最後には、よく比較される「甘酒」との違いにも触れます。
酵素ジュースを誤解なく安心して楽しみたいナチュラル派の方に向けて、正しい知識をお届けするんだという意気込みで参りたいと思います。うまくいかなかったらごめんなさい…。
そもそも酵素ジュースとは?
酵素ジュースは「果物に砂糖を混ぜて常温で置くだけで作れるジュース」です。
甘くていい香りで美味しいフルーツジュースのようですが、その正体は微生物が活動してできる“発酵飲料”なんですね。
まずは「酵素ジュース」という名前が、なぜ多くの誤解を生んでしまうのかを整理しましょう。
果物+砂糖+微生物でできる「発酵ジュース」
酵素ジュースの材料はとてもシンプルで、
果物・砂糖・瓶 の3つだけ。
果物の表面には、目には見えないけれど 酵母菌や乳酸菌などの微生物 が自然に存在しています。
砂糖を加えて混ぜると、微生物が砂糖を“エサ”にして活動し始めます。
- 微生物が砂糖を食べる
- 二酸化炭素(泡)や酸を作る
- 香りが変わりシュワシュワしてくる
これが「発酵」です。
つまり酵素ジュースの本質は “果物の発酵飲料”。
香りや味の変化は、微生物が元気に働いている証拠なんです。
「酵素ジュース」という名称が誤解を生む理由
「酵素ジュース」と聞くと、
- 酵素が増える
- 体の酵素が増えて健康になる
- 生きた酵素が摂れる
とイメージされがちですが、これは科学的には誤解です。
酵素は タンパク質 なのでそれ自体が増殖することはありません。
ただし、微生物が発酵の過程で酵素を産み出すので、微生物が増えることでその分酵素が増える、とはいえます。厳密にいえばそうなのです、でもめっちゃ酵素増えるーではないんです。後述しますが。
「酵素ジュース」という言葉が広まった背景には、“酵素=なんとなく健康に良さそう”という酵素栄養学によるイメージ戦略が影響しています。
子どもでも飲めるのはなぜ?
酵素ジュースは発酵が進んでも アルコール度数がほとんど上がらない のが特徴です。
酵母が砂糖を使い酸や香りは生まれますが、毎日空気に触れさせることで酵母のアルコール発酵を抑制します。
ただし、
- 発酵が進みすぎると微量のアルコールが出る
- 子どもには薄めてあげると安心
- 炭酸が強いときは蓋をゆるめてガス抜きする
など、軽い注意点はあります。
酵素ジュースに酵素は増えない(ここが誤解ポイント)
酵素ジュースの最大の誤解が「酵素が増える」「酵素を飲めるから健康にいい」という説明です。
実はこの2つは科学的に正しくありません。
ここをきちんと理解しておくと、酵素ジュースをより安心して、そして正しい意味で楽しめるようになります。
酵素とは?(分解・反応を助けるタンパク質)
酵素は、
体の中で起きるさまざまな化学反応をスムーズに進めるための“手助け役”。
例えば——
・食べ物を分解する
・エネルギーを作る
・身体の代謝を助ける
こういった大切な働きをしていますが、酵素とは 生き物ではありません。
細菌のように“増える”性質はなく、自分で増殖したりできません。
つまり、酵素ジュースを発酵させても 酵素が増えるわけではない のです。
しかも、たとえ酵素ジュースの中に果物由来の酵素が存在していたとしても、消化過程において私たち自身が持つ消化酵素で分解されてしまうというオチ…。皮肉ですねぇ。
酵素が増えない理由(微生物と酵素の違い)
酵素と微生物が混同されやすい理由は、どちらも“目に見えない存在”だからではないでしょうか。
でも役割は全く違います。
| 酵素 | 微生物(酵母・乳酸菌) |
|---|---|
| タンパク質(生き物ではない) | 生き物(細菌・酵母など) |
| 増えない | 砂糖を食べて増殖する |
| 発酵を起こさない | 発酵を引き起こす主役 |
| 温度で壊れたりする | 元気に活動して変化を生む |
また、酵素ジュースでよく誤解されるのが「発酵すると酵素が増える」という考え方です。
実は、これも正確には少し違います。
酵母は発酵の過程で自分の代謝のために酵素を作ります。それは間違いなく生まれている、のですが。
研究によると、酵母の酵素の多くは 細胞内に留まっており、家庭で作るような瓶の発酵環境で果汁中に放出される酵素の量はごくわずかしかありません。
(参照:Saccharomyces cerevisiae における酵母酵素の細胞内局在・分泌研究)
つまり、酵素ジュースを作っても、果汁中の酵素量が大きく増えるということは現実的にはほとんどなく、酵素ジュースの発酵の価値は、酵母や乳酸菌が作る酸や香り、シュワシュワとした炭酸などの変化にあります。
では何が増えているのか?(酵母菌・乳酸菌)
増えているのは 酵母菌・乳酸菌 といった微生物。
彼らが砂糖を食べることで、
- 二酸化炭素(シュワシュワ)
- 乳酸や有機酸
- 香り成分
などが作られ、果物のジュースが「発酵ジュース」へと変化していきます。
これが酵素ジュースの“おいしさの正体”です。
そして、微生物そのもの(発酵で増えた菌)がジュースに含まれることもあり、これが腸活として語られる理由の一つでもあります。
微生物の働きで起きていること
酵素ジュースがただの「果物+砂糖」から、香りの良い“発酵ジュース”に変化していく背景には、見えない小さな「微生物」が関わっています。
彼らがどんな働きをしているのかを知ると、瓶の中で起きている変化がもっと楽しく、安心して観察できるようになります。
砂糖をエサに繁殖する
果物の表面にはもともと、酵母・乳酸菌といった微生物がついています。
酵素ジュースを仕込むと、砂糖が彼らにとっての “ごちそう” になります。
微生物たちは砂糖を食べてエネルギーに変えながら、どんどん数を増やしていきます。
- 毎日混ぜると空気が入り、微生物が元気になる
- 温度が高いほど発酵が早く進む
- 砂糖が足りないと微生物が弱ってしまう
この「微生物の成長」のおかげで、発酵がスタートします。
まるで、瓶の中で小さな生き物を育てているような感覚ですね。
発酵で生まれる酸・香り・炭酸
微生物が砂糖を食べると、
乳酸・有機酸・エタノール(ごく微量)・二酸化炭素 などを作り出します。
これが、酵素ジュースに起きる変化の正体。
- シュワッとする泡 → 二酸化炭素
- 爽やかな香り → 発酵によって生まれる香り成分
- ほんのり酸味 → 乳酸や有機酸
「瓶の蓋を開けるとプシューッとなる」のも、微生物が元気に活動している証拠です。
これは酵素ではなく、あくまで 微生物が作る変化。
発酵の進み具合によって香りも味も変わっていくので、自分で仕込むと“日ごとの変化”が楽しくなります。
梅や紫蘇で作る場合の特徴
私も以前に作った「梅ジュース」「紫蘇ジュース」は、酵素ジュースとしてとても良い材料です。
● 梅の場合
梅の皮には酵母が豊富に存在し、
- 発酵が早く進む
- 香りが強く出る
- クエン酸との相乗効果で爽やかに仕上がる
というメリットがあります。
● 紫蘇の場合
紫蘇には抗菌作用もあるため、
- 雑菌が入りにくい
- 香りが華やか
- 子ども向けに好まれやすい
という特徴があります。
どちらも発酵が比較的安定していて、初心者でも扱いやすい素材です。
酵素ジュースを安全に作るポイント

酵素ジュースづくりはとても簡単ですが、「発酵」は微生物の活動そのもの。
安心しておいしく飲むためには、いくつか気をつけたいポイントがあります。
特に家庭で作る場合は、雑菌の混入や発酵しすぎによるトラブルを防ぐために、基本的な知識だけは押さえておきましょう。
雑菌のリスクを減らす基本
酵素ジュースは“発酵”ですが、別方向に進むと“腐敗”になることもあります。
どちらになるかは 「良い微生物が優勢かどうか」 に左右されます。
とはいえ、特別なことは必要ありません。
次の3つを押さえるだけで安全性はぐんと上がります。
① 容器をしっかり洗う
煮沸消毒までは不要ですが、
使用する容器をご自宅の洗剤で洗い、熱湯をさっと回しかければ十分。
② 果物は水気をふき取る
水分が多いと雑菌が増えやすくなります。
使用する果物の水気をキッチンペーパーでふき取るだけでOK。
③ 混ぜるスプーンも清潔に
使用前に熱湯をかけると安心です。
特別な道具や技術がなくても、
“普通のキッチンの清潔さ”で問題なく作れます。
もし気にならなければぜひ素手撹拌でいきましょう。
ご自分の常在菌と果物由来の微生物、せっかくなのでこのマリアージュは試してほしいですね。
瓶の爆発を防ぐための注意点
酵素ジュースで意外と多いのが、
「瓶がパンパンに膨らんで、開けたら飛び散った!」
というトラブル。
これは微生物が元気に働きすぎて、二酸化炭素が溜まりすぎた状態です。
これに対して、対策はたった2つ
- 1日1回ふたを開けてガス抜きする
- 密閉しない容器(軽く閉まる蓋)を使う
※発酵が早い夏は、1日2回ガス抜きすることも。
発酵が進むほど香りは良くなりますが、暴れすぎると瓶の中が大惨事に。
ここは忘れずに習慣にしましょう。
子どもに飲ませるときの目安
酵素ジュースは発酵してもアルコールはほとんど作られませんが、発酵が進みすぎたときには微量のアルコールが生まれる可能性 があります。
心配な場合は、次のような形がおすすめです。
- 初期〜中期の発酵で完成させる(香りが爽やかになった時点)
- 水か炭酸水で1/3〜1/2に薄めてあげる
- 夏は発酵が進みやすいので特に注意
もちろん市販のサイダーよりずっと優しい飲み物なので、家庭での楽しみとして安心して飲めます。
甘酒との違いは?
当ブログ読者のみなさんの中には、私が抱いた疑問「甘酒とどう違うの?」に共鳴して下さる方が多いと思うのです。
どちらも発酵飲料ですが、もちろん仕組みも味わいも目的も異なるのはわかるんです。
でも「発酵という揺るぎない共通キーワード」があるんですよね?
では、酵素ジュースと甘酒の違いを分かりやすく解説してみたいと思います。
甘酒は「麹の酵素」が糖化を進める飲み物
家庭でよく作る「米麹甘酒」は、麹の酵素がデンプンを糖に変える過程で作られます。
- 米や米麹を温めると、麹の酵素がデンプンを分解
- 自然な甘み(糖)が生まれる
- 発酵による香りや栄養も楽しめる
酵素ジュースと違って、甘酒の場合は酵素(麹由来)が直接糖化に関わるため、甘みがしっかり出る のが特徴です。
酵素ジュースとの発酵の仕組みの違い
| 項目 | 酵素ジュース | 甘酒(米麹) |
|---|---|---|
| 発酵の主役 | 果物表面の酵母・乳酸菌 | 米麹の酵素 |
| 発酵の目的 | 香り・酸味・炭酸を楽しむ | デンプンを糖化して甘みを作る |
| アルコール | ごく微量(ほぼなし) | ほぼなし(麹甘酒) |
| 作りやすさ | 常温で簡単 | 温度管理がやや必要 |
| 味 | 爽やか・酸味あり | 甘くてまろやか |
ポイントは、
- 酵素ジュースは微生物の活動そのものを楽しむ飲み物
- 甘酒は麹の酵素の働きを楽しむ飲み物
という違いです。
むしろ甘酒の方が酵素ドリンクといえる!?
みなさん、いかがですか、この混乱ぶり!
酵素酵素って、まんまとそのワードの沼から抜けられなくなるところですよ。
ここまでの内容を見てみると、酵素ジュースよりも甘酒の方が酵素がいっぱいで体にいい、という結論に至りそうではありますが、実はここにも落とし穴があって、
酵素は60度以上で加熱すると変性して失活する
のですよ。
甘酒ってあったかい方が美味しくないですか…?
結局、条件次第で簡単に健康効果は変わる、ということかもしれません。
しかも、実際に酵素を外から取り入れたとしても、自らの消化酵素や代謝酵素の働きによってほぼ分解されてしまうんでしたよね?酵素栄養学って…。
まとめ|“酵素”というワードに惑わされすぎた現代人の悲劇
発酵に関わる酵素、もうこれだけで健康界隈からはよだれが出るほどにたまらないキーワードなのかもしれません。
そうでなかったら、こんなにも酵素が入っていないかもしれないドリンクに「酵素ジュース」などという間抜けなネーミングは付けないでしょう。
酵素栄養学、これが唱えられたあたりから、酵素が優秀な健康素因であるかのような風潮が生まれたのかもしれません。
しかし、本当に体が元気になって栄養がちゃんと満たされるのって、科学的な原理もそうではあるけれど、もっとシンプルで誰にでも分かりやすい根源的なものではないでしょうか。
大好きな人たちと、
心地よい空間で、
ただ旬のものを感謝していただく気持ちと共に、
それが作られた経緯や裏話などを聞きながら、
笑顔あふれる時間を共にする。
それでハッピーにならないわけはないですよね。
ハッピーは元気に繋がる大事な素です。
酵素ジュースや甘酒ドリンクをお子さんなどといただく時に、ちょっとこんな話を思い出してもらえたら嬉しいです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
安全に楽しむ酵素ジュースの科学を知ったら、次は実際に作ってみましょう!
『梅・紫蘇酵素ジュースの作り方』はこちら
👉(近日中に公開します)
